『左近の桜』『右近の橘』 後編
カバー(画像):「実鈴」さん作(ありがとうございます)
ひな祭りもおわりましたね~!
お嬢様をお持ちのご家庭の皆さんは
もう※お飾りのお片付けは済まされました?
ヤバい! うちはまだだ~!!
娘たちが行き遅れる~!!!
※お飾りのお片付けのタイミングはあるの?
特にないとのことですが、下記の時期に片付けると良い。言われているそうな
1.ひな祭り(3月3日)が終わったらすぐ片付ける地方が多いが、4月3日(旧暦の3月3日)まで飾る地域もあるそうな(良かった!まだ大丈夫!!)
2.※二十四節気の一つ、啓蟄(けいちつ)に片付けるのがベストと言われてるそうな※新暦でいうと、実は今日です!
元々ひな祭りは、※(五)節句の一つ、『上巳(じょうし)の節句』(別名、桃の節句とも呼ばれる)で、二十四節気と共にから持ち込まれた “季節の節目” に関する慣習で、その節目に片付けると良いとされるのが理由らしいです
ですから、ひな祭りから約2週間を目安に。とか、 新暦の3月の中旬頃、旧暦なら4月中旬くらいまでに片付けるのが良いとよく言われるのは、下記の二十四節気に該当すれば。と言うことらしいです
【今年のひな祭り後の二十四節気】
啓蟄(けいちつ)3月5日(旧暦では4月5日になる)
春分(しゅんぶん)3月21日(旧暦では4月21日になる)
清明(せいめい)4月5日
3.一番科学的で(笑)、かつ、理にかなっているのが、天気!
よく晴れた、湿気の少ない日に片付けると良い。ひな人形に使用されている生地は湿気に弱く、天候の悪い、湿度が高い日に片付けると人形に湿気が残り、カビやシミの元になるそうな
ひな人形を片付けるのが遅れると、婚期が遅れる。と言われますが
結論から言うとただの迷信です
その昔、「片付けがちゃんとできないようでは、きちんとした女性になれず、お嫁にもいけない」と、しつけの意味を込めての言い伝えで、かつ、 情操教育のひとつとされたのです※女性に限らず、男性もしかり!(反省)
参考URL:Wikipediaより(ありがとうございます!)
※(五)節句
さて、前回のつづきですが・・・
ひな飾りの中心人物である 『お内裏様』 と 『お雛様』 にも
“かみしも(上座下座)” があることをご存じですか?
古来の礼法のしきたりで、「左上右下(さじょううげ)」という言葉があり
その中で一番偉い人、格の高い人、年配の人等が、一番左に座り(左上座)
その右以降は、次に偉い人、格の低い人、若い人等が座る(右下座)
という意味で、元々はから伝わったしきたりで、日本の飛鳥時代(中国は唐の時代)から明治時代に欧米のしきたりが入るまで、中心だった考え方でした
ですから、京都に都があった時代の帝(今の天皇陛下)は、妃(今の皇后陛下)の左側、つまり、我々から向かって右側に座っていました※今回のカバー画像は欧米のしきたりで並びが逆
明治時代になって、欧米のマナー(※プロトコル)が日本へ入り、皇室のしきたりが変化したそうな
大正天皇が皇后陛下の右に立って写真を撮影して以来、現在に至るまで天皇陛下の位置は皇后陛下の右側(我々からみて左側)が決まりとなった
そして、昭和3(1928)年、昭和天皇が皇后陛下の右にお立ちになった御大典(即位の式)の写真が全国的に広まった頃より、東京を中心に、ひな人形のお内裏様を我々からみて左側に、お雛様を右側に飾るようになったそうな
その際、二段目以降の人形の位置は変わらなかったために、お内裏様は右上位(我々からみて左側)ながら、代表的な随身一位の左大臣は、左上位(我々からみて右側)のままと新旧二つのしきたりが介在することなる※ややこしい・・・
参考URL:Wikipediaより(ありがとうございます!)
しかし、京都のように古い慣習を大事にする土地では
現在も昔の「左上右下(左上座右下座)」で飾っています
「京(風)雛」 と
それ以外の 「関東(風)雛」 の違い
一段目、お内裏様とお雛様について
1.お内裏様とお雛様の位置
【京雛】
古来の「左上右下」のしきたりのもと、お内裏様が左上位(我々からみて右側)
お雛様が右下位(我々からみて左側)
【関東雛】
お内裏様が我々からみて左側(右上位?)で、お雛様は右側(左上位?)
実は、現在の※ひな祭り(ひな人形)の形は、江戸時代初期に武家の子女等、身分の高い女性の嫁入り道具の家財の一つとして作られたらしく、元々は京ではなく、江戸がルーツだといわれてます
参考URL:Wikipediaより(ありがとうございます!)
※ひな祭り(ひな人形)
では、何故「関東雛」のお内裏様が左側で、お雛様が右側なのかというと・・・
徳川第二代将軍であり、最終官職として太政大臣にもついた、徳川秀忠(とくがわひでただ)の娘、東福門院和子(とうふくもんいんかずこ)が当時天皇だった第108代天皇の後水尾(ごみずのお)天皇に嫁ぎ、皇后となり、その間にできた娘(内親王)が、のちの第109代天皇の※明正(めいしょう)天皇となったために
お雛様が女帝だから、左上位(我々からみて右側)
お内裏様が右下位(我々からみて左側)※実際は、「女帝は即位後、独身を通さなくてはいけない」という不文律があり、生涯独身で、74歳に崩御されたとのこと
参考URL:Wikipediaより(ありがとうございます!)
※明正(めいしょう)天皇
2.お内裏様とお雛様の顔
【京雛】
特徴は、細面で鼻筋が通っており、目は切れ長な、高貴な顔
【関東雛】
特徴は、少しふっくらとした顔立ち。目が大きめ、口元は少し笑っている現代的な顔だそうな
二段目、『三人官女』について
【京雛】
中央の官女が持っているのは、「※島台(しまだい)」
参考URL:コトバンクより(ありがとうございます!)
※島台(しまだい)
【関東雛】
中央の官女が持っているのは、「三方(さんぽう)」で、盃を乗せる台のこと
現在のひな飾り(ひな人形)では、「関東雛」 の 「三方(さんぽう)」 がポピュラーです
三段目、『五人囃子』について
基本、「京雛」 「関東雛」 とも
能楽の地謡(詞章を合唱する演者)と囃子方(能の音楽を担当する奏者)ですが
たまに、※雅楽の楽士を並べるものもあるそうです
参考URL:文化遺産オンラインより(ありがとうございます!)
※(五人囃子)雅楽の楽士
五段目、『仕丁(しちょう・じちょう)』について
挿絵(画像):「実鈴」さん作(ありがとうございます)
仕丁(しちょう・じちょう)とは、平安時代以降、身分の高い家のもとで、雑務に従事したもののことで、地方から出てきて無報酬で働いていた、ひな人形の中で唯一の庶民です
そういった境遇でもあるため、「怒り」 「泣き」 「笑い」 という三つの表情で作られていることが多く、「三人上戸(さんにんじょうご)」とも呼ばれるそうで、「京雛」 「関東雛」 では、持ち物が違います
【関東雛】※上記挿絵画像参照願います
・我々から向かって左側の仕丁
血色の良い、うすだいだい色の肌をした「怒り」の中年男性で、台傘(日傘)をもっている
・中央の「泣き」の仕丁
血色の悪い(?)、色白の肌をした「泣き」の青年男性で、沓台(沓を置くための台)をもっている
・我々から向かって右側の仕丁
血色の良い、うすだいだい色の肌をした「笑い」の老人男性で、立傘(雨傘)をもっている
【京雛】
・我々から向かって左側の仕丁
基本、血色の良い、うすだいだい色の肌をした「怒り」の中年男性で、熊手をもっている
・中央の「泣き」の仕丁
基本、血色の悪い(?)、色白の肌をした「泣き」の青年男性で、ちりとりをもっている
・我々から向かって右側の仕丁
基本、血色の良い、うすだいだい色の肌をした「笑い」の老人男性で、竹箒をもっている
これは余談ですが、前編に
ひな人形の中で、お顔(肌)の色で血行の良い方々は、『左大臣(老人)』 と一部の『仕丁(しちょう・じちょう)』 だけとお話しましたが、どうやら、中高年(老人)層の人形だけ、肌の色が濃い傾向にありますね~※是非、ご自宅のひな人形で確認してください!
現在にもいきづく
“かみしも(上手下手)”の慣習
前編に、今回の話題に関する内容を
私が専門学校で教鞭をとっていた時に授業をしたと申し上げましたが
将来ホテル・ブライダル業界の就職を目指す(ほとんどが女子)学生に対し
古来の “かみしも” ならびに、欧米における “かみしも(プロトコル)” が混在する
このややこしい日本で(笑)、少しでも理解を深めてもらうために授業をしたという経緯がありまして、最後にその時に話した内容を少しばかり・・・
舞台ならびに落語のおける “かみしも(上手下手)”
基本、舞台は、我々からみて、右側が上手、左側が下手ですが
これは、舞台(からみて)を中心にして、「左が上手」 「右が下手」 が原則だからなんです
挿絵(画像):「いらすとや」さん作(ありがとうございます)
その影響は、落語の “かみしも(上手下手)” にもいきづいています
一人で話す「落語」において、どちらを向いて話をしているかで、その人物の身分や年齢がわかります
の演劇では
「上手(我々からみて右側)」に「身分の高い人」や「年上の人」が座る設定になっていることから
落語においても
「上手」を向いて話している人は、「身分の高い人」 「年上の人」
「下手」を向いて話をしている人は、「身分の低い人」や「年下の人」となるわけです※ひな人形の左大臣右大臣と同じでしょ?
結婚式における “かみしも(上手下手)”
における代表的な結婚式のスタイルは 「神前式」 「キリスト教式」 でして
新郎・新婦の立つ位置は同じ、新郎の左側に新婦(=新婦の右側に新郎)です
我々からみて、左に「新郎」 右に「新婦」 です
が、その理由がそれぞれ違うのです
「神前式」の場合
式場内の神様がいるご神殿からみて
「左が上手」 よって 「新郎」
「右が下手」 よって 「新婦」
日本古来の「左上右下(左上位右下位)」の原則で
我々からみても 「左に新郎」 「右に新婦」になのですが
“かみしも” 上、神様からみて “上手下手” なんですね~(難)
「キリスト教式」の場合
欧米の “かみしも(プロトコル)” にのっとって
「並んだ時に右側に来る方を上位とする」
「右上左下(右上位左下位)」 が原則なので
「新郎」 「新婦」 本人からみて
「右が上手」 よって 「新郎」
「左が下手」 よって 「新婦」
我々からみると、「左に新郎」 「右に新婦」 となるわけです
いかがだったでしょう?
まだまだ “かみしも(上手下手)” に関するお話は
つきませんが、今回はここまでに・・・m(__)m
それよりも、早く
ひな人形を片付けないと!